Background
石本酒造株式会社は、地元・新潟市の「二十歳のつどい(旧成人式)」でオリジナルデザインの日本酒「越乃寒梅」をプレゼントするキャンペーン「ありがとうを、酌みかわそう。」を展開しています。0100010は、本キャンペーンの企画とプロデュースを担当。二十歳を迎える方々が、これまで見守ってくれた方々を想う。そのきっかけとなる仕掛けとメッセージを越乃寒梅のパッケージデザインに盛り込んだ、体験型の企画です。若者に向けたオリジナルデザインの「2枚ラベルの日本酒ボトル」を開発し、ラベルのイラストを使った映像なども制作しました。
Planning
新型コロナの流行に伴い、2020年は日本酒関連のイベントが中止になるなど、生活者との接点が少なくなっていました。そんな中、石本酒造では将来につながる動きを模索。そのひとつが、日本酒離れが進む若者に向けた施策です。飲酒ができるようになる二十歳を迎えた方々に越乃寒梅を贈り、お祝いの気持ちを伝えたい。日本酒の楽しみ方も知ってもらいたい。そんな石本酒造の思いから、この企画はスタートしました。
課題は、二十歳を祝う記念品として単に日本酒をプレゼントしても、記憶に残りにくいこと。新潟の新成人にとって越乃寒梅が「初めての日本酒」になるだけでなく、二十歳を祝う日が一生の中でより特別な思い出になる。そんな思いを込めて、もともと日本酒やお酒に興味が薄い世代に、どうやったら関心を持ってもらえるか検討を重ねました。
この企画のポイントは、二十歳を祝う「おめでとう」という言葉は、二十歳を迎える方々はもちろん、彼らをこれまで支えてきた親や家族、恩師などにも向けられるものという観点に着目したことです。二十歳を迎える方々の親世代は、越乃寒梅はメインの購買層であり、その魅力を二十歳を迎えた子どもに伝えることができる。そうした背景を踏まえ、親世代と若者へ同時に訴求しようと考えました。そうした骨子から生まれたのが「ありがとうを、酌みかわそう。」というコンセプトです。
理想は、二十歳の記念に贈られた越乃寒梅をきっかけに「おめでとう」「ありがとう」とお互いを想い合うこと。日頃、言いづらい感謝の気持ちを伝えたり、大切な人を想ったりする。そうした体験を通じて二十歳のお祝いが特別な思い出になり、ひいては若い人たちにとって越乃寒梅がハレの日のお酒であると認知され、ブランドの好意を高めることにもつなげたい。そのために考えたのが「2枚のラベルステッカー」を貼って完成させるオリジナルボトルの企画でした。
特徴は、二十歳を迎える方々の気持ちを動かし、行動につながる仕掛けを盛り込んだ体験型の施策であることです。その発端となるコンセプトムービーを制作しました。成人のお祝いでもらった越乃寒梅をきっかけに、親や先生などに見守られて成長してきたことに自ら気付き、感謝したい相手に思いをはせる。そして、照れくさくて言いづらい「ありがとう」を伝える口実として、「お祝いでもらったお酒を一緒に飲もう」と約束をする。そして、ボトルのラベルを選んで貼る。そんなステップを想定し、コンセプトからアウトプットまでトータルでディレクションしています。
Output
石本酒造から希望者に贈られる越乃寒梅には、16種類のラベルステッカーが同封されています。ラベルに描かれているのは、二十歳を迎える自分自身をはじめ、親や家族、恩師など、さまざまな人物をイメージしたイラストです。ボトルの色は、日本酒では珍しいペルーカラー(淡いピンク)を本施策のために開発。現代的で爽やかな表現を心がけました。
2020年のラベルのイラストは、“後ろ姿”をテーマに、さまざまなアートワークを展開している青春botさんが担当。2021~2022年からは、新潟市出身の田中寛崇さんが担当しています。コンセプトムービーは、青春botと新潟市出身のシンガーソングライター、果歩さんが手がけています。楽曲は、新潟や全国の新成人・20代の若者へのアンケート結果をもとに制作しました。
2枚のラベルが貼られた越乃寒梅は、SNS上で拡散されています。ムービーは「二十歳のつどい(旧成人式)」で上映されたほか、Twitter、Instagram、TikTok上で10万回以上再生、100以上のWEB、TVメディアなどでも公開されました。
コロナ禍により「二十歳のつどい」に参加できなかった新成人やその両親からは、「二十歳という特別な日を地元の日本酒である越乃寒梅で、あらためて祝うことができました」という喜びの声も寄せられています。コンセプトから、ボトルやラベルなどのデザインやムービーなどアウトプットまで一気通貫した体験型の施策はデザイン業界でも話題となり、2021年度グッドデザイン賞も受賞しました。台湾で発行されている日本文化を紹介する雑誌「秋刀魚」をはじめ、Z世代に人気のメディアなどでも紹介されました。
Credit
クリエイティブプロデューサー:武石君宏(0100010)
映像プロデューサー:大隈章由(ティーアンドイー)
ディレクター:松本麻梨子(0100010)
プランナー:鈴木小夏(0100010)
映像監督/篠原健太郎(ティーアンドイー)
デザイナー:伊藤裕平、清水万里合(TBWAHAKUHODO Disruption Lab)、
小林亜雅沙(SESAME)
コピーライター:大嶋美月(TBWAHAKUHODO)